賃貸事務所(貸事務所)の建物賃貸借契約書について、契約書の条文の意味合いや根拠となる法律などをわかりやすく解説しています。

条文の解説【第13条(禁止行為)】

第13条(禁止行為)

乙は、甲の承諾なしに、次の行為をしてはならないものとする。

①賃借権を譲渡し、または担保に供すること。

②営業譲渡、合併、その他形式にかかわらず、本契約に基づく一切の権

  利を乙以外の者に承継すること。

③賃貸借室内外の全部、または一部を第三者に転貸、使用、占有させる

  こと。

④賃貸借室内に第三者を同居させ、または乙以外の在室名義を表示する

  こと。

⑤賃貸借室及び館内案内板などに、乙以外の名称で表示板の掲出、電

  話、ファクス等の引き込みを行うこと。

⑥賃貸借室以外を、不法に占有すること。

⑦賃貸借室、または本件建物に損害を及ぼすような一切の行為をするこ

  と。

⑧乙が賃貸借室内で営む営業行為を、第三者に業務委託すること。

⑨館内使用細則及び建物利用の案内等において禁止する事項。

 

【解説】

第13条では、賃借人(借主)の禁止行為について、規定されている。

民法第612条の規定に基づいているものと解される。民法第612条の規定では、一項において、賃借権の譲渡及び転貸を制限している。二項において、使用又は収益との文言があるため、第三者による賃貸借室や賃貸借に付随する設備等における使用及び収益につながる行為を制限しているものと解される。

 

【関連法令】

民法第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)

 

条文の解説【第12条(甲の免責事項)】

第12条(甲の免責事項)

火災、盗難または諸設備の故障等による損害について甲は自己の責任により発生したもの以外については責任を負わないものとする。

 

【解説】

第12条では、賃貸人(貸主)の免責に関することを規定している。免責とは、責任を免じること。責任を問われるのを免れること。の意味がある。ここでは、本来、賃貸人(貸主)には、賃貸物の使用に必要な修繕をする義務を負っている。しかし、通常に管理していたとしても、不可抗力的に起こりうる損害については、賃貸人(貸主)の責任により発生したものでない場合は、免責とする旨の特約と解される。逆説的には、故意又は過失により、賃貸人(貸主)に責めがある場合には、賃貸人(貸主)に責任があると解される。

 

【関連法令】

民法第606条(賃貸人の修繕等)

 

条文の解説【第11条(損害の賠償)】

第11条(損害の賠償)

乙または乙の代理人、使用人、請負人その他関係者が、故意または過失により、甲または第三者に損害を与えた場合、乙はその損害をすべて賠償しなければならないものとする。

 

【解説】

第11条では、賃借人(借主)の善管注意義務及び使用者責任に関して、賃借人(借主)に対する債務不履行及び不法行為による損害賠償について規定されている。

 

【関連法令】

民法第298条(留置権者による留置物の保管等)

民法第400条(特定物の引渡しの場合の注意義務)

民法第415条(債務不履行による損害賠償)

民法第416条(損害賠償の範囲)

民法第600条(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限)

民法第709条(不法行為による損害賠償)

民法第715条(使用者等の責任)

 

 

 

 

条文の解説【第10条(善管注意義務)】

第10条(善管注意義務

乙は、賃貸借室及び本件建物の使用について善良なる管理者の注意義務をもって使用しなければならないものとする。

 

【解説】

賃借人(借主)は、賃貸借室や建物共用部などを使用する際に、一定の注意を持って使用することを規定している。一定の注意とは、通常に使用するにあたり、要求される注意義務で原則的な注意義務のことである。

 

【関連法令】

民法第298条(留置権者による留置物の保管等)

民法第400条(特定物の引渡しの場合の注意義務)

条文の解説【第9条(敷金)】

第9条(敷金)

1.本契約に基づく債務の履行を担保する為、乙は敷金として賃貸借契

  約要項記載の通り甲に預託するものとする。

2.敷金は無利息とし、甲は本契約終了後、乙が第20条の定めにより

  賃貸借室を完全に明け渡し、且つ本契約に基づく債務を完済してか

  ら速やかに、乙より預託された敷金を乙に返還するものとする。

3.乙に延滞賃料、損害賠償、その他本契約ならびに本契約に付随して

  締結した契約に基づく債務があるときは、甲は催告なしに敷金をこ

  れに充当出来る。この場合、乙は充当の通知を受けた日から7日以

  内に敷金の不足額を補填しなければならないものとする。

4.乙は、賃貸借期間中に敷金をもって賃料その他の債務との相殺を主

  張することができないものとする。

5.乙は、敷金に関する債権を第三者に譲渡または債務の担保の用に供

  してはならないものとする。

6.乙は、返還敷金を受領する権限を第三者に委任してはならないもの

  とする。

7.償却については、賃貸借契約要項記載の通りとする。

 

【解説】

第9条では、敷金の預託とその扱いに関する事項を規定している。こちらの規定に関しては、特別な解説を要することはないと思われます。

 

条文の解説【第8条(賃料その他の改定)】

第8条(賃料その他の改定)

本契約による賃料、共益費は、本契約更新時に甲乙協議の上これを改定することが 出来る。また、賃貸借期間内といえども、経済情勢が著しく変動し、また管理費用の増大等により、賃料、共益費及びその他の諸費用が不相当と認められたときは、甲乙協議の上これを改定出来るものとする。

 

【 解 説 】

第8条では、賃料、共益費の改定に関する事項が規定されている。この契約書では、甲乙協議の上となっており、問題はないが、借地借家法第32条において、当事者と記載されていますので、賃貸人(貸主)、賃借人(借主)共に含まれていると解されるが、借地借家法第32条は、強行規定ではないため、賃貸人(貸主)が改定できるなどの賃借人(借主)に不利な特約がされても、有効とされる可能性があります。注意が必要です。

 

【関連法令】

借地借家法第32条(借賃増減請求権)

借地借家法第37条(強行規定

条文の解説【第7条(費用の負担)】

第7条(費用の負担)

1.乙は、共益費として賃貸借契約要項記載の金額を甲に支払うものと

    し、その支払方法等は、第6条に準じるものとする。

2.乙の賃貸借室使用に関連して生ずる賃貸借室内の電気、水道その他 

  使用機器料金及び消耗機器の取替費用、室内清掃等の費用は、一切

  乙の負担とし、甲が立て替えたものは、甲の請求により直ちに支払

  わなければならないものとする。

 

【 解 説 】

第7条では、賃料以外に賃貸借室を使用するにあたり、必要となる費用について、規定されている。費用の負担に関する特約と解される。

この条項においては、一般的な内容であり、特別な解説を必要とするものではないと思われます。